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呼応
 

2015

荒川洋治の詩
​「ギャラリー」をもとに制作。

ギャラリー

ブランコはいつも

同じひとをのせてしまいます

じょうずなひとのちからで

揺れているのです

なのに恋人は

​ぼくのブランコを見たい見たいと言ってきかないのです

ぼくはあきらめて

ぼくは板にとびついて

四谷の 公園の砂場において

努力するうち

ブランコはしぶしぶ揺れ出しました

でも

ぼくはブランコがへたです

なかなか前へ進まない

何度言ったらわかってもらえますか

何度ためしてみせたら信じてもらえるのですか

それでなくとも

この公園は山手線の環ゴムに

首をしめられているというのに

ぼくはへたです

恋人は見つめています

ぼくはへたです 降りたい

でも恋人はにっこり見つめてきます

だがぼくはごらんのようにへただ

それでも恋人は

そこをじょうずに 見つめています

都会はたいてい

このように日暮れ、潰されていきます

​ぼくはへたです

​恋人は見つめています

荒川洋治「荒川洋治全詩集1971-2000」思潮社(2001)より

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