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息の管Ⅰ

​2012

わたしは息をしている。

これまで、からだを動かして
文字を書いたり、線を引いたりしてきた。
わたしにとってこの動きはなんなのだろうか。

高校時代、吹奏楽部に所属していた。
肺活量を増やすために毎日、楽器を触る前に
必ずしていたトレーニングがあった。
仰向けからすこしだけ上体を起こした体勢で
息を4拍で思いっきり吸って
16拍で吐き出すというものだ。
息を吐き出す量は必ず一定でなければならない。
息の、まっすぐな管をつくる。
からだじゅうの神経と意識と筋肉を
すべて息のことに集中させる。

60のテンポのメトロノームと
わたしの息の音だけの世界。
からだの全部が息の管となり.

じわじわと外に出て行く感覚。
あのトレーニングが
わたしにとっての動きの基となっている。

わたしのからだ、口元から足先までを使って動いたこと
そこで書いた文字や引いた線はすべて息の管のなかにある。


 わたしは息をしている。

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